モーターサイクリスト誌が1981年度より設定したツーレポ大賞。
その第1回目の受賞者は、当時20歳の当店オーナーの金子でした。

以下にモーターサイクリスト誌1982年1月号での受賞のことばと、
1981年1月号に掲載された作品を3回に分けて掲載していきます。

 受賞のことば 

「エッ?エッ?じゅうまんえん!私が大賞!(大将?)スゲー。」 これが最初の連絡のとき・・・。
そして目の前に「ツーレポ大賞」が水引までくっつけてあるのよネ。しかしボツにならずに載っただけでもたいしたものなのに、頭、アタマですよ。
仲間たちは「当たった」と表現してるけど、これもひとえに根性のタマモノですヨ。
でね、受賞決定の連絡のあった日は、大貫さんが1年前、1億円を自分のモノにした日だったんです。奇遇だなァ〜。


受賞作品 第一話 

金子幹典 スズキGS400E

他にもキチガイが・・・
1時間程度の仮眠しかできなかった。顔と手足にクリームを十分にすりこむ。0時15分前、友人の酒井と中村が見送りに来た。
中村は「考え直さないか?」と言うが、男は一度決めたらやらねばならんのヨ。
やつらはバイオレットで(MCならなおよかったが)館林まで伴走してくれる。ウォームアップのつもりでペースは抑えめに、60〜80km/h程度で走る。館林バイパスに入ったところで手を上げて別れる。止まるとメゲてしまいそうだから。「がんばれヨー」と声をかけてくれた。
R356をひた走る。まだ寒さは感じないから、今のうちに時間と距離をかせいでおかなくちゃ。
まわりの車は皆スキー板を載せている。スキーに行くのか、じゃ俺は何をしに行くのか?ふとそんな疑問が起きた。
走っている俺の正面にはオリオン座。こいつはいかにも星座って感じがして好きだ。
80〜100km/hで走ってると、風の音が間断なくヘルメットのまわりでうず巻き、後へ飛び去っていく。車を追い越すたびにエキゾーストサウンドが割って入るが。
今泉町で信号待ちをしていると、ライダーが左折してきた。次の信号で追いつく。練馬ナンバーのXL250S、やはり相当の重装備だ。そしてやはり寒暖計を持っている。「どちらまで?」と俺。「十日町まで」と彼、「それじゃあ、R17で三国峠を超えて?」、「そう」。「お宅は?」と彼、「直江津、日本海まで」と俺。幾度か信号で止まるたびに断片的な会話をする。アア、じゃあ伊勢崎までは一緒だ。この季節、この時刻に雪国に行くツーリストがいる。キチガイは俺ひとりじゃなかった!と100円拾ったようなうれしさを感じた。でもトレールは楽だろうナ、雪道じゃ装備で200sを越すGSはかなりシンドイだろうな・・・。

なんのために」
またひとりになった。車の数も少なくなり寂しい。高崎市街へ入ったところのスナックの前で、1回目のメモ(時間・距離・気温)を記す。「1:23、71.8q、-0.5℃」
店から出てきた体の不自由な男が、ホステス然とした女に送られれて真夜中の街へ帰って行く。後姿に人間臭さを感じた。
R18に乗る。徐々に標高が上がって、安中を過ぎ碓氷峠に近づくにしたがって寒さが増してきた。
旧道を行くかバイパスにするか迷ったが、交通量の多さでバイパスを取る(旧道のほうが楽しめる道だ)。ここは2年振りかナ。
手と足は冷え切ってしまっていうことを聞いてくれず、数回シフトミスをする。
トラックの後ろにつくとディーゼルスモッグが目にしみる。追い越すと闇。ライトの光は黒々とした路面に吸収され、次にどんなコーナーが始まるのかわからない。路肩には氷が、山にはまだ雪が残っている。無性に寒いと思ったら、ライトの光線の中で粉雪が舞っている(最初はホコリだと思った!)。
果てなく感じられたバイパスもやがて終わり、料金所が現れた。ジャケットのチャックを開けて硬貨を出そうとするが、指が思うように屈折してくれない。ここで2回目のメモ。「2:23、115.2q、-6℃」
マイナス6℃!きついナ、そうだ缶コーヒーを買おう、熱いやつを、と思い販売機までヨロヨロと歩く。ハハハ、足がもつれとる。
停車中の4t車は、分厚い氷と雪のマスクで日野KLかふそうFKかもわからない。この先大丈夫かナ?気温もどんどん下がるだろうし、引き返すかナ、無理しちゃ本当に命落としかねないし。まだ6分の1程度の距離しか走ってないのに。やっぱり無理なことなんだナ・・・。迷った末、もう少し、せめて長野までは走ろうと自分に言い聞かす。「よし、走るんだ」。
シールドの中で前車のテールランプがにじんでいるのは、霜取をタップリと吹いてあるせいだ。
淡々と60km/hで走る−−それ以上スピードを上げられない。100km/hを越すと目がチカチカする。「いくら着込んでもMCに乗れば同じ」と誰かが言ってたけど本当だ。電熱服が欲しい。ハンドルカバーはだめ(直接風にさらされないだけましか?)、ブーツの中のトウガラシもペケ。頭と心臓だけが生きているって実感。
いや、頭の中もさっきから堂々巡りしている−−「何のために?」−−。

つづく。


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